構造設計業務の進め方というのは一つに限られるわけではありません。最初に想定していたよりも部材が大きかったりして、修正を加える場合もありますし、使い勝手の自由度を下げてもいいから安くしたいという話になるかもしれません。何にせよいろいろとシミュレーションをしてみんなが一番納得できるパターンを探して、さらに検討して落としどころを見つけるのです。誰でもみんなが見えないところにはお金を使いたくはありません。毎日目にする壁や床の仕上げ材にはお金を使うと満足感を得ることが出来ますが、杭にお金をかけても日々の満足感を得ることはできません。ただし、いざというときのための安心感を得ることはできます。
現在取り組んでいる私の業務が、珍しいことに2件続けて違う人の設計を変更して設計し直すという仕事になっています。そのうちの一つが木造の建物を鉄骨造に設計し直すというモノで、アメリカや中国での木造住宅ラッシュの影響で木材が手に入りにくい状況のため、少々コストがかかっても鉄骨造で早く建物を建てたいという経緯があります。建物を使いたい日時が決まっている場合、年末まで木造用の材料が手に入りませんという状況ですので、みんなが何か他の方法を考えていると思います。
そもそも、なぜ周りは山だらけの日本で木材不足になったのかというのも不思議な所なのですが、戦後日本はあたり一面焼け野原で家を建てるための材料が不足していました。江戸時代後期や明治時代の頃は木は切ったら切りっぱなしで、人の住んでいる地域では森がなかったのです。それが、戦争の空襲などで都市部は焼けて全国的に昭和20年代後半からは木材が不足になっていったのです。よく昔の田園風景などと言いますが、大正時代や昭和初期の山は、はげ山で緑がいっぱいというモノではなかったのです。そこに加えてアメリカからの圧力もあって圧倒的な量の海外輸入木材が一般的になりました。
その後、安い輸入木材の影響で日本の林業従事者の数は減っていき、今では高齢化と跡継ぎ不足で悩んでいるところも多いと聞きます。建物に使えるようなまっすぐで太い部材を削りだすには間伐など普段から山の手入れが必要で、ほったらかしておけばそのうち木が勝手に育つわけではないのです。それに乾燥させるにしても山から製材所まで運ぶ必要があり、人手が必要になるのですが、今の日本ではそのような体制が整っていません。その為、国産の木材のシェアは2,3割といったところです。
いまでは、建築基準法で定めている木造住宅の定義も昔ながらの大工さんの腕の見せ所は無くて、接合部を金物に頼った仕様になっておりますが、これも前提が海外からの輸入木材を主眼に置いているためです。国産の木材を使うことが出来れば、頑張って植林したスギやヒノキの花粉の飛散量も減ってみんなが喜ぶと思うのですが、なぜか物事はうまいこと行かないのですね。
皆さんも頑張って広告や新聞やニュースの裏を読んでくださいね。
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